「南京大虐殺」のまぼろし (WAC BUNKO)



「南京大虐殺」のまぼろし (WAC BUNKO)
「南京大虐殺」のまぼろし (WAC BUNKO)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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やはり「まぼろし」なんですよ

もともと鈴木明という作家が書くものが好きで読んできたら、この本に出会った。したがって所謂どっちかの派閥に属しているわけではない。そのことにはあんまり興味がない。話が飛んでしまうが昔々(40年以上前)朝日新聞に掲載されていた「カナダ・エスキモー」という連載物をわくわくして読んだ記憶がある。その連載を書いていたのが「本多勝一」でその後この人の作品も結構読んだ。ただ何時の時点からか・・つまり中国ものを書き出してから「ちょっと変だな」と思った記憶がある。この「ちょっと変だな」という啓示とこの本の出だしの「ちょっと待てよ」とは奇しくも同じだと思う。なにか整合性がとれないのである。この整合性の解明に乗り出したのが本作であると考えている。あったかなかったかという単純でないぼやっとしたものがまさしく「まぼろし」として存在しているのである。鈴木明という人が書きたかった本質を理解して読まないと下らん論争だけが残ってしまう。
「南京大虐殺はまぼろし」ではない

この書籍が出版された時代を考えると、取材や資料の収集は容易ではなかったと思います。当時の世相や時代背景も考慮した上で、このようなノンフィクション書籍が書かれたのは凄いことだと思います。ノンフィクションは、著者が感情移入し過ぎると客観性を欠くし、中立性を保とうとし過ぎると著者の主張が伝わらず醍醐味に欠ける分野だと思います。この書籍は、「南京大虐殺」という扱いにくいテーマを「客観性」と「著者の主張」のバランスを絶妙に保ちながら書かれていると思います。残念なのは、「南京大虐殺のまぼろし」という書名がセンセーショナルであったために、色々な人が自分の主義主張に都合の良いように解釈してしまっているのではないかと思われる点です。書籍が書かれた時代背景も十分踏まえた上で、偏りのない姿勢でこの本を読むと、「南京大虐殺」への理解がより深まると思います。
「バイブル」は読まれない。本書もまず「まぼろし派が熟読すべき」の★4個

世の中には「読者に恵まれなかった」著というものがある。ヒトラー等に愛されたが故に今尚その作品の演奏・上演に様々な足かせのかかる大作曲家の著書への評なのだけど、全く次元は違うが或いは本書もその類かもしれないと思った。
書物というもの、やはり実物を通読して見ねばならないものだとも、強く思った。

著述家としては処女作といって良い第1章を読んだだけで著者のノンフィクション・ライターとしての(少なくともこの時点での)技量がわかる。一つは論理的思考の拙さ、第二にペンより先走る「感情」である。
逆に言えば、その取材力は一定水準にあるし、一部に改変があるらしいが収集した証言等は貴重である。
敗戦直後の日本軍の証拠隠滅の記録は貴重だし、1例だけ挙げるならば本書213頁の「捕虜の始末」の件。著者の文を除くと実にリアルな記録である。

そういう著者のある意味で素朴な動機が他からの力により増幅される過程も明らか。第2章は問題の「事件」の二将校の最期すら知らずに「処女作」が執筆・公表されたこと、また既に論争があって、その渦中に投じられた状況を恐ろしいほど率直に語っている。
で、結果的に章を重ねるにつれ、二重、三重の苦悩の中で語られた証言等に含まれる、おそらくは「真実の一端」に関わる『ことば』とそれを追う著者の文とのギャップが深くなっていってしまう。

本書本文だけの話でない。単行本化時、文庫本化時のあとがき、さらには今回の復刻にあたって添えられた解説文が、著者自身が「『南京大虐殺はまぼろし』ではない」と明言し、巻末で数万の犠牲者を推定していながら、「事件」そのものの存在を否定する「まぼろし」派のパイオニア的存在に祭り上げられる過程を暴露する。

著者が哀れにも思えるが、やはりその根本原因は「中国の奮闘を祈る、日本の奮闘を祈る…」の言葉を残して刑場に散った将校の精神に程遠い、狭量な文章を公にして恥じなかった著者の貧しさだ。




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